研究概要 |
本年度は,「遺跡を埋没させている堆積物の概要把握」,「遺跡を最初に埋没させた噴火の特定」を中心課題とし,そのための地質調査と分析を行った. 地質調査は,ソンマヴェスヴィアーナの遺跡において,発掘作業と並行して約一ヶ月間に渡り行い,この際,化学分析,年代測定用試料の採取も行った.また,遺跡試料との対比を行うため,ヴェスヴィオ火山テフラ噴出物模式露頭のあるオッタビアーノにおいて,各層の系統的試料採取を行った. 遺跡における地質調査の結果,遺跡を埋積している堆積物は時代の異なる5つのグループ(グループI, II, IIIA, IIIB, IIIC)に分けられることがわかった.このうち最下位の最初に遺跡を埋没させたグループの1の噴出物は,下位から火砕サージを含む降下火山灰・スコリア層(厚さ数10センチ程度),4層の泥流堆積物(厚さ3メートル程度),土石流(河川性)堆積物(数10センチ〜1メートル程度),土壌層(数10センチ)から構成されることが明らかになった.噴火に直接由来する堆積物である降下スコリア試料について,地震研究所で表面形態の観察,顕微鏡下における組織の観察,マイクロプローブによる斑晶鉱物の化学組成の測定,蛍光X線による全岩化学組成の測定を行った.この結果,本試料は模式露頭でAD472年とされているスコリアと全ての特徴が一致することがわかった.また,グループIの様々な部位から採取した炭化木片等を用い放射性炭素年代測定を行った結果,AD472年前後の年代値が得られた.これらのことから,遺跡を最初に埋没させたのは,当初推定されたAD79年ではなく,AD472年の噴火であったことが明らかになった.これらの研究成果について,内容の取りまとめを行い,1月にGeochemical Journal誌に投稿した.
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