研究概要 |
・平成17年度,874年の開聞岳の噴火で埋没した水田遺構が発見された鹿児島県指宿市敷領遺跡の北側の部分で,試作した多電極表面電位探査システム(MEDUSA)を用いた表面電位探査と,地中レーダ探査を行った。その結果,874年の噴火で堆積した火山灰層は一部で残存していたが,新たな水田遺構は発見できなかった。地下の含水率が北側に行くほど高くなる結果が得られたことから,北側を流れる河川の洪水などにより削平されたか,もともとそれを恐れて耕作が行われていなかったと判断した。 ・新たに,開聞岳に近い,指宿市開聞町の開門中学校庭で,地中レーダ探査と電気探査を実施し,874年の噴火で罹災し移設された枚聞神社の遺構の存否を探った。その結果,地下にかなりの傾斜を持つ構造を発見した。これが,枚聞神社の遺構かは現時点では判断できないので,平成19年度引き続き探査を行うこととした。 ・874年の開聞岳噴火の火山灰層とその直下の土壌サンプルを採取するために,開聞岳周辺を探索している際に,指宿市山川岡児ヶ水で874年の火山灰層直下に畑跡を発見した。この遺跡を「慶固遺跡」と名づけた。この遺跡は開聞岳から直線距離で5kmしか離れておらず,大量の火山灰が一気に降下し埋没したために,当時の生活跡が,より完全な形で保存されている可能性があり,火山災害の記録として第一級のものになる。平成19年度以降,調査を続ける。 ・イタリアのソンマベスビアーナで採取した土壌の分析を行った結果,日本の火山罹災地の土壌と異なり,ベスビオ火山北麓では,カリウムなどが多く含まれ,肥沃な土壌であることが発見された。 上記遺跡では,3次元レーザスキャナを用いて,本年度発掘部分のほぼ完全な記録をとった。また新たに開発した移動式レンジセンサを用いて,ポンペイの遺跡の計測も実施した。
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