研究課題/領域番号 |
16089207
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
鷹野 光行 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (20143696)
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研究分担者 |
新田 栄治 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (00117532)
松浦 秀治 お茶の水女子大学, 生活科学部, 教授 (90141986)
近藤 恵 お茶の水女子大学, 生活科学部, 助手 (40302997)
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キーワード | 噴火罹災遺跡 / 火山灰 / 水田遺跡 / レーダー探査 / 開聞岳 |
研究概要 |
東京工業大学亀井宏行教授の研究班とともに昨年度実施した、鹿児島県指宿市敷領遺跡の地中レーダー探査の結果に基づき、指宿市教育委員会と共同して、同遺跡の発掘調査を実施した。調査は8月26日より9月10日まで行ない、レーダー探査の結果遺構の存在が有力な場所を選んで、10m×12mの発掘区を設定し、湧水と台風による出水に悩まされながらも、平安時代の貞観16(874)年3月末の開聞岳の噴火による火山灰等で埋没した水田を1面、発掘した。 当地で「紫コラ」と通称されるこの火山灰は非常に固くしまっていて、人力での掘削はできず、この層の除去までは機械力に頼った。紫コラ直下で水田の畦を検出したのでここからはもっぱら人力によって掘り下げ、土壌サンプル採取用に田の中央部を残して完掘した。 この水田は面積が約55m^2、表面に確認できただけで470箇所の稲株跡と見られる窪みを検出したが、これからこの田における稲の収穫量の推定した。実験の結果現在の田で、おおよそ1株あたり30gの籾が得られることが把握されており、これから推量してこの田からは15kg程度の籾が得られることになる。 水田面から得られた炭化物の放射性炭素による年代測定では、1340±40yrB.P.と1310±40yrB.P.の年代が得られた。水田面、および発掘区の壁から土壌サンプルを採取して、植物珪酸体(プラント・オパール)分析を行った。その結果水田検出面では、イネが5,000〜10,000個/g前後と多量に検出され、稲作跡であることの検証ができ、イネの密度は、区画によって差異がある。畦畔上でもイネが少量検出されるので、水田土壌による畦の作り替えはなかったとの推定ができる。またススキ属が比較的多く、湿地性のヨシ属はわずかであるので、この時期は乾田であっただろう、遺跡周辺にはシイ属、イスノキ属などの照葉樹林が分布していた、などの所見があった。これらについては平成18年2月26日開催の国際シンポジウム「アウグストゥスの別荘?火山噴火罹災地における生活・文化環境の復元に向けて」において概要を発表し、調査所見を含めた発掘報告書をまもなく刊行する予定である。
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