研究概要 |
本年度は,(1)リストアップした判例の英訳作業を進め,それと同時に,(2)わが国の著作権法制を紹介するための概説書の執筆作業を開始した。また,(3)わが国の国際知的財産法を紹介するための作業も行った。 (1)判例英訳については,最初に下訳がなされた50件をチェックする作業を行ってきている。その際には,訳語の統一を図るため,日本語の本文と照らし合わせ,メンバー全員で内容を検討しながら辞書を作成している。下訳の質が高くないものについては,改めて翻訳しなおしている。チェックが済んだ英訳判例から順に,ウェブサイトに掲載していく予定である。現在,総括班では,英訳した判例の検索システムを開発している段階にあり,その準備が整い次第,英訳判例を自在に使えるポータルを整備していく予定である。 (2)判例英訳の作業と合わせて,外国人の実務家及び学者が,わが国の著作権法制について理解できるようにするため,平易で読みやすい概説書を執筆する作業も開始した。特に,著作権法の専門家である上野及び小島は,ベルヌ条約及びWIPO著作権関連条約の内容及び諸外国の著作権法制に造詣が深いため,これらの法制とわが国の著作権法制の異同を踏まえたうえで,外国人が日本法を理解するために有益となる情報を盛り込んだ概説書の執筆に取り掛かっている。 (3)さらに,国際私法を専門とする研究者も加わっている本研究プロジェクトにおいては,国際的な著作権をめぐる様々な法的問題について,わが国の裁判例及び学説を紹介するための作業を行ってきている。国際知的財産法について特に問題となるのは,国際裁判管轄と準拠法決定であるが,アメリカ法律協会(ALI)及びドイツ・ミュンヘンのマックス・プランク研究所(MPI)において,それぞれルール化の努力がなされているのを踏まえたうえで,いずれはわが国独自の提言を行っていくことを視野に入れながら,研究を行っている。
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