国際仲裁を中心として、国際的な民商事紛争をADRによって解決する場合の問題を、国際私法・国際民事訴訟法理論との整合性を念頭におきながら研究した。具体的には、仲裁手続準拠法や仲裁契約準拠法の決定について、「仲裁地」を連結点とする場合の問題点や仲裁地の解釈、実体判断基準の準拠法、知的財産紛争への仲裁の利用可能性、ADRによって得られた結果を国際的に執行する場合の問題点等について検討した。また、これらの研究との関係上、近く成立が見込まれる改正国際私法の内容を批判的に検討し、とりわけ契約及び不法行為準拠法の決定について、将来の国際取引実務に及ぼす影響について意見を述べた。さらに、知的財産権の仲裁可能性、仲裁財産権事件の国際裁判管轄については、2005年、2006年に早稲田大学において開催された国際シンポジウムにおいて報告を行った。以上の研究と並行して、日本の仲裁法に関する判例の英語訳を進め、HPにおいて公表するべく、現在作業を続けている。 法学部・法科大学院における仲裁等のADR教育の手法や内容について検討するための実践的試みとして、実務家や仲裁研究者を招聘して連続セミナーを開講し、受講生からのフィードバックを得た。さらに、わが国における国際仲裁の法的規整について英語による論文を発表した。 仲裁合意と管轄合意・準拠法選択合意との関連性については、これらの合意の統一的規整の可能性について、従来の研究を継続して英語による論文を作成し、シンガポールで公表した。国際民事手続法の領域については、財産所在地の国際裁判管轄に関するドイツ判例の展開を調査し、日本の解釈論への影響について考察するとともに、国際民事手続法に関する共著テキストにおいて、裁判権、国際裁判管轄、外国判決承認・執行、国際民事保全、国際仲裁の部分の執筆を担当し、わが国における法規制の現状について概観した。これらの研究成果に基づき、わが国における国際裁判管轄の決定方法及び国際仲裁の規整について、ブラジルで行われた国際シンポジウムにおいて研究報告を行った。
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