研究概要 |
(1)手話画像の認知特性と表示条件の関係 短い手話画像どうしを照合する実験を行い,聴覚障害者は手やその軌跡を注視する一方,健聴者は手話を話すモデルの上半身全体を見る傾向をもつこと,手話画像の異なる部分を答える際の正答率に画面サイズは関係せず,解像度とフレームレートのみが有意な主効果をもつことが判明した。また手話単語の読み取り実験では,手話を読む手掛かりが,(a)口の周辺にある単語,(b)片手の手形や手の短い軌跡にある単語,(c)両手の比較的長い軌跡にある単語に分類したところ,(c)は画像サイズ,解像度,フレームリートをかなり落としても読み取り可能なことが判明した。しかし,(a)と(b)は3条件が微妙に相互作用をし,特に(i)の手話単語では,画面サイズが5×4cmまたは解像度が113×90pixelになると90%の正解率で読みとることが不可能となった。しかし,単語読み取りに必要な手話画像表示条件は,照合の場合に比べれば大幅に緩和されることになり,手話の認知に上述の手掛かりが重要な役割を果たすことが明確になった。 (2)胃部レントゲン検査指示用手話画像の表示法 この研究では,4種類の胃部レントゲン検査用の手話画像の評価実験結果に基づいて,手話画像の理解に画像の時間構造がどう関係するかを分析した。手話画像が単語(あるいは形態素)に分割し,それらの渡り部分の時間に主として着目したところ,時間が長くなることによって手話単語の識別が容易になる傾向があるが,手話単語の正解率と時間の間に統計的に有意な関係は存在しないことが判明した。手話画像の改善で留意すべき点として,手話を状況に応じた方法で表現し,場合によっては手話ではなく,身振りを使用すべきであることが明らかになった。
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