研究概要 |
高齢者の製品に対するメンタルモデルを探るべく,実験を行った. 1つは,高齢者に対して,4つの課題(インタフェース構築課題)を提示し,準備されたパーツを使って課題を達成させる,あるいはその操作手順を書かせるものである.できた操作部と表示部の関連について,若年者と比較すると,高齢者(特に後期高齢者)では関連があまりみられない傾向にあった.また,他の部品との関連が多くみられる部品については使用経験種が多くなると,操作具を中心とするものから表示・操作具となるのがみられた.これらについては,操作具のみによる操作か,画面表示部をともなった製品の影響があるのではないかと考えられる.部品の並べ方については,高齢者の女性に縦や横方向に一列に並べるという,直列的な配置が多くみられた.関連して実験時の観察でも,1枚ずつ順番に並べていくという光景がしばしば見られた.このことから特に高齢の女性に逐次的な処理をする傾向があることが考えられる. もう一つの実験は,アルゴゲームを使い被験者がどのような戦略をとるのか調べるものである.通常の思考プロセスとして,まずアルゴの情報量を受けると,その情報を注意フィルタによって選別し,その一部を意識作業領域(ワーキングメモリ)に入れる.次に,情報を再結合し,その情報は保持される.目的が達成されるまで,正常にこれらのステップが繰り返されると考えられる.しかし,本実験の結果より,1問目から段々と記憶保持量が増加する5問目になるにつれ,高齢者のエラーや,短絡思考の数が増えている.とくに5問目では正答できなかった被験者の約半分が短絡的思考に陥っていた.このことから高齢者はある一定の情報量が必要になると,ヒューマンエラーや短絡思考を起こしやすくなると考えられる.
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