研究概要 |
1)視覚障害者のユーザ調査で得た知見を元に,音声認識方式とテンキー方式のリモコンを試作し,使い勝手の評価実験を行った結果について述べた.これらの知見を踏まえて,最終年度は「触覚と音声を用いた家電リモコン」および「音声とテンキーを統合した家電リモコン」の試作評価を行った.今後の課題としては,エアコン以外の家電のリモコンでも同様な結果が得られるかどうかの確認などが挙げられる. 2)ウェブの利用には様々な問題点があるが,2006年度はコンテンツに注目した.主な成果を述べる: ・見出し要素で構造化したサイトと構造化してないサイトを用意して,晴眼者16名及び視覚障害者4名のタスク達成時間を比較した.その結果,構造化によってタスク達成時間が最大半分に減少すること,視覚障害者の方が構造化によるタスク達成時間の減少が大きいこと,構造化により晴眼者と視覚障害者のタスク達成時間の差が少なくなることがわかった.(この論文は,2007年5月にカナダで行われたInternational Cross-Disciplinary Conference on Web AccessibilityでBest Paper Award受賞) ・ニュースサイトなどで使われる写真にどのような説明を付けると音声で聞いたときにわかりやすいのかを調べるために,色々な種類の写真を用意し,それに対して数種類の音声による説明を付け,晴眼者による評価実験を行った.その結果,「口調の良さ」「言葉の簡単さ」「表現が曖昧でない」「十分に説明している」「短さ」「聞き慣れた言葉を使っている」「客観的」の順に分かりやすさに影響を与えていることが分かった. 3)高齢者に対する早口合成音声の聴取の慣れを調べるために,4桁の数字の聞き取り実験を行った.その結果,高齢者も早口の合成音声をある程度は聴取できるが,女子大生と比較して平均聴取率が低く個人差が多かった,また,4週間の実験期間内に慣れの効果が出ない被験者や聴取率が上下する被験者がいた.聴取率の判定基準を少しゆるめて,出現順によらず正しければ聴取できたと判定すると,高齢者も女子大生と同じような聴取率であったが、慣れの効果はやはり女子大生の方が顕著であった。
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