研究概要 |
実験室課題においてエラー反復を生じさせる要因として,まず大学生を対象とした研究によりエラー反復現象を生じさせる課題の検討を行った.第1実験としては,空間配置のランダム化と刺激的顕在性(彩色条件)を付与した漢字選択課題において,通常状態でのエラー反復,正解時の反応時間分析を行い,少数ながら大学生でも空間配置ランダム化によってエラー反復を生じていること,反応時間には刺激顕在性の効果も示されることが明らかになった.次に,大学生の二重課題条件下による注意分割状態では刺激顕在性によるエラー反復がエラー反復生起確率によっても示され,全体として10%程度のエラー反復が見られること,特にルアー項目の刺激顕在性が高いとき(ルアー項目に明度の高い彩色をしてある場合)に高くなることが示された.そこで次年度に高齢者群に対して同様のエラー反復が起こるか否かを検討するために,その準備段階として,注意能力の要因を個人差要因として検討するためのpaper-and-pencilテストを準備し,65歳以上の高齢者221名を対象としたスクリーニングテストを行った.当該テストにはAIST版認知的高齢化テスト(熊田他2004)の6課題のほか,顕在/潜在記憶課題,日常的注意能力質問紙,日常的な機器使用に関する質問項目が含まれていた.認知的高齢化テストの6課題については,課題切替タスクが他の5課題との相関がいずれも高く,当該課題のみ低成績の被験者を抽出することができなかったが,他の5課題については,当該課題のみが下位20%タイルに入り,他は中・高成績を示した群を設定し,それぞれの群について10名以上のサンプルを得て,漢字選択課題実験を実施することとした.
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