研究概要 |
現代社会には多くのIT機器や電気機器があふれている.それらの機器の役割は,生活を便利にし,人々の幸福感やQOLを向上させることだとされている.特に高齢期においては,その役割は強まると考えられる.しかし,これまで,それらの機器の利用実態,利用の背景にある要因や,利用がもたらす精神面に対する影響に関する基礎的な資料も少ないのが現状である.本研究は,IT機器や電気機器の利用に関して個人差が大きい超高齢者を対象に,第1にIT機器,電気機器の利用実態と,利用に影響する要因を明らかにすること.第2に機器の利用が幸福感に与える影響を検討することを目的として実施した. 東京都板橋区I地区在住の87歳以上の超高齢者97名を対象に,住居状況,家族構成,学歴,職歴といった基本属性の他に,基本的動作能力(バーセル指標),高次な日常生活能力(老研式活動能力指標),心理的幸福感(PGCモラールスケール),そして,日常生活で利用する代表的な10品目の機器の利用の有無や利用の状態,利用していない場合には利用の希望を調査した. その結果,機器の特性に応じて,性別,同居者の有無,学歴が利用に関連していることが示された.また,他の変数を調整して基本的動作能力,高次な日常生活能力および機器の利用が幸福感に与える影響を検討した結果,機器の利用を従属変数とした場合に最もモデルの説明率が高かった.これらの結果から,超高齢者では,機器の利用に生活暦などの複数の要因が関連していること.そして,機器の利用には幸福感を高める影響が存在することが確認された.
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