研究概要 |
本年度は,以下の研究-(1)置換族の構成に関する研究;(2)ネットワークのルーチングに関する研究;(3)ネットワークのレイアウトに関する研究;(4)大規模システムの高信頼化に関する研究-を行った. (1)置換族の構成に関する研究:これまでにk-対独立置換族の構成に関しては,特定のkにおいてその構成が知らており(k=2,3),一般のkに関しては,その非自明(対称群・交代群以外)な構成法は存在しないと予想されていた.そこでk-対独立置換族の条件を緩和しε-近似k-対独立置換族という概念に着目し,Feistel変換を用いて,任意のkに対するε-近似k-対独立置換族の構成法を提案した.さらに,その挙動をマルコフ連鎖と捉え,マルコフ連鎖の定常状態への収束速度をカップリング法を用いて解析することでε-近似k-対独立置換族の近似精度および置換族のサイズの上界を導出した(伊東). (2)ネットワークのルーチングに関する研究:QoSアルゴリズムに関する研究では,各種のパケットをその優先度に応じて効率的に転送制御するための複数キューQoSアルゴリズムに関して検討した.一般にQoSスイッチに到来するパケットを事前に予測することは不可能であるので,QoSアルゴリズムはオンラインアルゴリズムとして定式化される.そして,キューに格納されているパケットを破棄することを許したパケット破棄不可能モデルに着目し,複数優先度を持つ複数キューQoSアルゴリズムの競合比の解析を行ない,これまで未解明であった非自明な下界を導出するとともに,単一優先度における競合比の下界を改善した(伊東).また,マルチキャスト通信について考察し,マルチキャスト木のコスト制限下で遅延を最小化する問題に対する完全多項式時間近似スキームを提案した(上野). (3)ネットワークのレイアウトに関する研究:グラフの直交描画に関する研究では,外平面グラフと直並列グラフに対して,少ないベンドを用いて二次元及び三次元に直交描画する多項式時間アルゴリズムを提案した(上野).また,三次元チャネル配線に関する研究では,二端子ネットの組を配線するために必要な三次元チャネルの層数の上界と下界を明らかにした(上野). (4)大規模システムの高信頼化に関する研究:逐次故障診断に関する研究では,様々なシステムの逐次診断可能次数の上界と下界を統一的な手法を用いて示した(上野).また,確率的耐故障ネットワークに関する研究では,様々なネットワークに対して,疎な確率的耐故障ネットワークを構成する統一的な手法を提案した(上野).
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