研究概要 |
本研究では,グラフ構造を持つ離散最適化問題を中心としてスケジューリング問題,図形充填問題などの問題に対して厳密解法(多項式時間アルゴリズム,分枝限定法),数理計画法に基づいたアルゴリズム,理論保障付き近似アルゴリズムの開発を行う. 初年度は,グラフ連結度問題,スケジューリング問題などにおいて近似アルゴリズムの開発や理論的基盤に関する研究を中心に行い,2年目においては,これらの研究課題について研究を進展させると同時に,最近重要性が高まっている情報の可視化において有用な技術となるグラフの描画問題の研究成果を加えた.今年度は,これまでの研究課題に対して結果をさらに改良させるとともに,グラフ連結度に関する近似アルゴリズムの設計やデタッチメント操作の化学グラフ推定問題への新しい応用などの発見をすることができた.このほか,食品の袋詰め問題やファイアウォール高速化のためのデータ構造など応用に直結する課題についても成果を収めることができた. とくに,グラフ連結度に関する近似アルゴリズム対する統一的なアプローチの確立を行った.ここでは,枝遊離操作と呼ばれるグラフ変形法が使用されている.これは,巡回セールスマン問題や枝連結度増大問題などのネットワーク設計問題において従来より広く応用されている操作であり,遊離される枝が接続する節点を除く2節点間の枝連結度を保存するための条件が,LovaszやMaderらによって得られている.我々は,この結果をさらに強め,任意の2節点間の局所枝連結度を保存するための条件について考察し,それに基づいて,上記のアルゴリズムを設計している.また,この枝遊離操作に関する結果を元に,ディタッチメントと呼ばれる枝遊離操作を一般化した操作が局所枝連結度を保存するための新たな条件を求めることにも成功した.
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