研究概要 |
量子計算機はまだ実現はしていないもの、現在注目されている計算方式の一つである。本研究では、将来の量子計算機の有効な利用のために、様々な状況下での量子計算の能力の解析や利用方法に関して、今年度は以下の研究を行った。 1 古典スタック付き量子プッシュダウンオートマトンの計算能力 量子デバイスと古典デバイスが協調して動作する計算機のモデルとして古典スタック付き量子プッシュダウンオートマトンを提案し、片側誤りのもとで純粋な古典モデルより真に能力が高いことを示した。 2 エラーのある量子オラクルの分類を行う量子アルゴリズム ある決められたオラクルの集合が与えられ、そのうちの一つがブラックボックスとして与えられた時に、何回そのブラックボックスのオラクルに質問すれば、オラクルを同定できるかという問題に対して、オラクルが量子的なサブルーチンとしてGrover Searchに利用できると仮定すると、問い合わせに対してオラクルが定数確率で間違った値を返すと仮定しても、問い合わせ回数がほぼ最適なアルゴリズムを設計した。 3 N個の関数の値のORを分散環境で効率よく計算する量子プロトコル AとBがl個の入力データxとyをそれぞれ持っている状況で、l個のf(x, y)の出力のORを計算するときにAとBの間で必要な通信量(ビット数)を考える。特に、fがxとyが違うかどうかをチェックする関数のとき、この問題はlist-nonequality function : LNE(l,k)と呼ばれ、分散環境での通信量に関して基本的な問題である。この問題に対して、量子のプロトコルに古典のランダムコインの概念をうまく取り入れることによって、古典の場合よりも効率的な計算手法を設計した。 4 古典計算機と量子計算機を協調させてプログラミングする枠組み 通常のC++で書かれたプログラムからほぼ全自動で、Grover Searchで置き換えていい部分を判定し、その量子アルゴリズムに相当する量子回路を生成する手法を実現した。今後はGrover Search以外の量子アルゴリズムについても検討する課題が残っている。 これらの研究成果を踏まえて、今後更なる研究を進め、量子計算の様々なモデルでの計算能力や利用方法を明らかにすることを目指す。
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