研究概要 |
量子計算機はまだ実現はしていないもの、現在注目されている計算方式の一つである。本研究では、将来の量子計算機の有効な利用のために、様々な状況下での量子計算の能力の解析や利用方法に関して、今年度は主に以下の研究を行った。 1.量子情報を複数に秘密を分散して管理する手法 安全な情報の管理のために、パスワードなどの重要な秘密情報を複数に分散し、そのうちのいくつかが集まれば秘密が復元でき、しかも集まってきた情報のうち不正なものが何かを識別することができる手法を閾値秘密分散法と言う。秘密が量子情報の時に、直交配列とスタビライザ符号を用いて秘密分散を安全に行う手法を考案した。 2.公開する情報に「封」をする手法 封筒にいれた手紙などに紋章などの封をすることのように、データを途中で誰も見ていないことを保証する「封」の役割を実現する手法を考案した。考案した手法は、既に提案されている手法よりも不正がよりしにくい性質を持つと期待される。 3.リング状のネットワークでの量子分散アルゴリズム リング状のネットワークにおいてDistinctnessと呼ばれる関数を計算する場合の通信量の下限を示した.また下限にほぼ一致する上限を持つ2つのプロトコルも設計した.得られた上下限は,各計算機に与えられる入力の可能性の数が計算機の数と同じオーダーの時には等しくなるので,設計したプロトコルはほぼ最適であると考えられる. 4.量子情報を送信可能な量子秘密通信プロトコル 量子暗号プロトコルとしては量子鍵配布が有名であるが,本手法では,鍵の配布だけでなく任意の量子ビットを安全に送信できるプロトコルを考案した. これらの研究成果を踏まえて、今後更なる研究を進め、量子計算の様々なモデルでの計算能力や利用方法を明らかにすることを目指す。
|