研究概要 |
本研究では,入力要素の値が時間とともに連続的に変移する環境において,要素間の関係が時々刻々と変化するような様々な問題を扱い,数理最適化モデルとして定式化する統一的な手法の検討と,精度の高い近似解及び高速性能を保証するアルゴリズムの開発を目的とする.今年度は,次のような組合せ最適化モデルの形式化および計算量に関する検討を行った. 1.探索者が未知グラフの全ての頂点を訪問することで頂点の隣接構造を調査するモデルを検討した.探索者は辺の存在とその長さをその端点を訪れるまで判らないとする.このように,局所的な情報が時々刻々と与えられるオンライン環境で,探索者はできるだけ短い経路を通ることにより全ての頂点と辺を調査して,出発点まで戻って来なければならない.本研究課題では,このオンライン環境における経路最適化問題に対するオンラインアルゴリズムの設計とその競合比解析を行い,研究成果をSOFSEM2007で公表した. 2.ディスク・メモリ間のページ単位でのデータ転送回数の最適化問題は,オンライン計算モデルとして定式化されることが多く,ページング問題と呼ばれる.本研究課題では,このブロック単位のデータ転送をオフライン計算モデルとして定式化する.オフライン計算モデルとして定式化した場合には,アクセスするデータ構造のディスク上での配置,すなわち,ブロック単位への効率の良いデータ分割により,全体のデータ転送遅延を小さくすることが目的となる.本年度は,有向非巡回グラフを対象として,ブロック転送問題に対する近似アルゴリズムを設計し,CIAC2006で公表した. 3.高次について分類が困難であるようなデータ集合のバンプ領域を求めることを目的とした最適化問題に対して,テストサンプル法とブートストラップ法のメリットを併せ持つ方法を提案し,解精度について詳しく調べた.一連の成果を論文誌と国際会議で公表した.
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