研究概要 |
交通事故や骨粗鬆症に起因する股関節破壊による歩行活動障害を回復するための人工股関節の高信頼性・高機能化は急務の課題である.特に,従来の人工股関節では個人の骨格形状に適合するような外形加工の実施が困難である現状にある.そこで,患者の骨形状に応じた人工関節設計システムの開発を目指し,本年度は下記の4点に示す項目を重点的に研究を推進した. 1.CT画像を用いた骨部のFEM解析モデルの作成 骨部断面のCTを用いて連続撮影を行い三次元画像処理を施し,画像データを基に三次元有限要素モデルの半自動作成を行うプログラム開発を行った.今後,骨の物性値等の計算ならびに人工股関節(ステム)の形状変更に伴う力学的特性の影響等の調査を行う予定である. 2.ミクロ-マクロ連成解析の定式化およびプログラム開発 有限要素モデルを多段階に重ね合わせ,スケール間の連成問題として巨視的な変形状態と微視的な力学的挙動の把握を行う手法の定式化ならびにそのプログラム開発を実施した.静荷重下の力学応答に加えて,温度変化によるステム-骨系の変形等も考慮する必要性から,熱伝導・熱応力問題として従来の有限要素解析との比較・精度検証を行い,本手法の有効性を示した.今後,骨部内の不明瞭な組織境界の影響を考慮した物性値評価手法への定式化を図る予定である. 3.ステム用複合材料の損傷進展解析の実施 ステム用複合材料の損傷異方性を考慮し,損傷進展解析プログラムの構築も行い,損傷準展機構の解明に着手した. 4.剛性・耐久性実証試験のための試験装置の設計 生体環境下での人工関節の使用を鑑み,人工関節の力学的特性評価試験方法として市販の油圧式疲労試験機の試験治具を改良し,生体環境模擬槽を用いた試験機の設計を行った.今後,試験機の製作ならびに人工関節部・骨部の変形・損傷進展挙動の解明を行う予定である.
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