研究概要 |
交通事故や骨粗鬆症に起因する股関節破壊による歩行活動障害を回復するための人工股関節の高信頼性・高機能化は急務の課題であり,特に,従来の人工股関節では個人の骨格形状に適合するような外形加工の実施が困難である現状にある.そこで,患者の骨形状に応じた人工関節設計システムの開発を目指し,平成18年度は下記の3項目について重点的に研究を推進した. (1)ミクロ-マクロ達成解析プログラムの構築 前年度に構築した,損傷異方性を考慮したマルチスケール損傷進展解析手法に基づき,弾塑性特性を考慮した定式化を行い,ミクロ-マクロ達成解析プログラムの開発を実施した.開発プログラムを用いて,ステムに使用される織物複合材料の力学的特性の評価を行った. (2)応力解析結果に基づくジャストフィットを考慮したステム設計 CTによる断面観察画像より,従来のステムでは骨上部でステムが接触する面積がわずかであり,荷重伝達箇所を増すためのステム形状加工も困難であることが指摘されている.そこで,上記のプログラムを用いた応力解析を実施し,荷重伝達箇所が増すような複合材料製ステムの内部形状および材料設計を行った.その結果として,荷重伝達性に関して金属製ステムとの優位性を示した. (3)複合材料製ステムの製作と光造型骨モデルでの剛性評価試験の実施 上記の設計案に基づき,複合材料製ステムならびに光造形樹脂による骨モデルを作成し,剛性評価試験を実施した.次年度以降に実施予定である骨試験片(ドライボーン)を用いた試験ならびに骨物性の異方性評価のために必要な試験方法・条件に関する有用な知見を得た. (4)生体適合性評価試験の実施 ステムの生体適合性評価のため,ハイドロキシアパタイトコーティングに関する実験・考察を行い,その成果を各学会誌において発表した.
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