研究概要 |
交通事故や骨粗鬆症に起因する股関節破壊による歩行活動障害を回復するための人工股関節の高信頼性・高機能化は急務の課題であり,従来の金属製人工股関節では個人の骨格形状に適合するような外形加工の実施が困難である.そこで,患者の骨形状に応じた複合材料製人工関節設計システムの開発を目指し,平成19年度は下記の項目について重点的に研究を推進した. (1)人体骨物性の異方性評価手法の構築 骨組織の力学的特性評価のためCT撮像による骨密度計測ならびにマイクロインデンテーション試験法による微視領域の力学特性評価試験を実施し,人体骨物性異方性の評価手法を構築した.ヒト大腿骨試験片を対象に,本手法の有効性を検討し,骨部の骨密度と弾性係数の関係を明確にした. (2)ミクローマクロ連成解析プログラムの構築 損傷異方性を考慮したマルチスケール損傷進展解析手法に基づき,有限要素モデルを多段階に重ね合わせ,スケール間の連成問題として巨視的な変形状態と微視的な力学的挙動の把握を行うミクローマクロ連成解析プログラムを構築し,その検証解析を実施した. (3)骨モデルでの耐久性評価システムの構築と解析の実施 骨-人工関節系の耐久性評価を評価すべく,ねじり疲労試験システムの設計を実施した.また,骨モデル(光造形樹脂モデルおよびヒト遺体大腿骨)と人工関節との接触界面における挙動を評価し得る手法を構築し,例解析により本解析手法の有効性を示した. (4)生体適合性評価試験の実施 前年度に引き続き,ステムの生体適合性評価のため動物実験を通じ材料適合性に関する実験・考察を行い,その成果を各学会誌において発表した.
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