研究課題/領域番号 |
16101002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邉 正己 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (20111768)
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研究分担者 |
鈴木 啓司 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (00196809)
児玉 靖司 大阪府立大学, 先端科学研究所, 教授 (00195744)
熊谷 純 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (20303662)
島田 義也 独立行政法人放射線医学総合研究所, プロジェクトリーダー (10201550)
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キーワード | 長寿命ラジカル / ビタミンC / エピガロカテキン / 突然変異 / システインラジカル / X線 / 遠紫外線(UV-B) / 照射後処理 |
研究概要 |
室温でγ又はX線照射された哺乳動物細胞中には半減期が20時間以上の長寿命ラジカルが生成することがわかった。水のラジオリシスによって生成した活性酸素が完全に消失している照射後20分や2時間後にビタミンCを細胞に添加すると、細胞死や染色体異常頻度に変化はなかったが、HPRT^-突然変異頻度は有意に下がると同時に長寿命ラジカルレベルも下がることがわかった。こうした放射線効果軽減作用は、ビタミンCだけではなく、エピガロカテキンやRibCys(リボースシステイン)にも同じ効果があり、長寿命ラジカルが突然変異誘発に関与していることを強く示唆している。本研究で発見したX線照射によって生成する長寿命ラジカルは、システインが酸化されたスルフィニルラジカルであることが明確となった。 長寿命ラジカルは、照射後、第1回目のDNA合成期を経ても、依然として細胞内に残り続け、その遺伝的影響が残ることが判った。さらに、突然変異を起こした細胞のDNAの傷をPCR解析した所、ビタミンCで有効に軽減する突然変異体の遺伝子は、点突然変異に限られるので、タンパク質に生じたシステインラジカルは、細胞内に安定して存在し続け、DNA合成期にDNAの複製忠実度を低下させることで突然変異を誘導しているものと推測される。 さらに、遠紫外線(UV-B)で照射された細胞内に、X線やガンマ線などの電離放射線被ばく時に見られるラジカルと極めて類似した構造を持つラジカルが発生し、ビタミンC処理で効率的に捕捉でき、それに伴って細胞致死効果に影響を与えないものの、突然変異の誘導を効率よく抑制することが判った。UV-Bで誘導されるラジカルのESRパターンは、細部構造がX線で誘導されたラジカルのパターンと異なるので、さらに詳細な検討が必要であるが、タンパクラジカルが突然変異の原因であることは明確である。これらの結果を受けて、X線照射されたマウスの発癌を、照射後のビタミンC処理で抑制できるかどうかの検討を始めた。
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