研究課題
これまでに長寿命ラジカルは、タンパク質中に生じたスルフィニルラジカル(R-CH_2-SO・)であることを明らかにした。しかし、どのような機構を介して突然変異を誘導するかは明確ではなかった。長寿命ラジカルは常温細胞内で安定であることから、長寿命ラジカルが、"バイスタンダー効果"の伝達因子として働き、細胞の遺伝的不安定化に関与し、突然変異誘導や発がんの原因となると予想し、照射細胞にビタミンCを処理して、バイスタンダー効果(微小核誘導)が変化するかどうかを調べた。その結果、照射後、5mMのビタミンC処理によって微小核誘導が有為に抑制されることがわかった。この効果は、OHラジカルの捕捉剤DMSOやNOX捕捉剤c-PTIOで処理しても全く見られないので、長寿命ラジカルが、バイスタンダー効果の伝達因子として働く可能性が示唆される。また、UV-B照射でもガンマー線の場合と同様に、タンパク成分にスルフィニルラジカル(R-CH_2-SO・)が誘導され、それが突然変異の原因となることを明らかにした。しかし、ESRスペクトラムは細部においてガンマー線で誘導されたそれの形と微妙に異なるので、違うものである可能性は否定できない。現在、詳細に検討中である。さらに、細胞レベルで確認されたビタミンCによる突然変異や細胞がん化抑制効果が動物個体で可能かどうかの調査を開始した。そのため、ビタミンCで長寿命ラジカルを捕捉することによってマウスにおける放射線誘導乳がんの発生を抑制できるかどうかを調べているが、現在まで、顕著な抑制効果は見られていない。マウスは生体内でビタミンCを生合成できるため、抑制効果が見られなかったものと思い、現在、ビタミンC生合成能欠損マウスを入手し再検討をおこなっている。この長寿命ラジカルは、ビタミンCで効率良く捕捉され突然変異や細胞がん化頻度を下げるが、今回、これと同様の効果が、ガリック酸でも認められることが判り、天然植物素材から抗変異原性および抗がん原物質の探索に期待が持てる。
すべて 2006 2005
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