研究課題
本研究は、"放射線を照射された細胞にタンパク由来の長寿命ラジカル(LLR)が生じ、そのラジカルが放射線による突然変異と発がんの主因である"とする独自の発見に基づく仮説の是非を検証するために計画した。平成19年には、放射線照射によって生ずる長寿命ラジカルは、放射線照射に対するストレス応答機能の活性化に伴って生ずるミトコンドリアにおけるエネルギー産生亢進に起因するプロトン漏出によって生じることを明らかにした。この経路は、放射線被ばく時に限らず、高密度培養時や細胞老化時にも同様に活性化され、細胞内酸化ラジカル量を高めDNA損傷量、染色体異常、細胞がん化頻度等を上昇させることがわかった。この発見は、放射線による細胞がん化は、細胞の生存に必須なエネルギー生産系の攪乱を起源とし、自然発がんの経路と全く同じである可能性を支持する。放射線被ばくした細胞は、非被ばく細胞に比べ、有意に細胞内酸化ラジカル量を増加させ、最終的に細胞老化を促進する。こうした細胞集団の中で、かなり高い頻度で細胞内酸化状態が低下する細胞集団が出現し、最終的には、無限増殖能を獲得しがん化することが明らかになった。がん化した細胞に共通してみられる遺伝的変化は染色体の三倍体化であった。LLRを特異的に捕捉する能力があるビタミンC処理は、細胞内酸化ラジカル量を低下させ、細胞老化を遅らせ、染色体三倍体化を抑制し、細胞がん化頻度を低下させることがわかった。
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http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/rb-rri/