研究課題/領域番号 |
16101007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅 裕明 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00361668)
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研究分担者 |
村上 裕 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助手 (10361669)
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キーワード | リボザイム / RNA / RNAワールド / バイオテクノロジー / 試験管内進化 / 翻訳 |
研究概要 |
本研究計画は、試験管内RNA分子進化法を駆使し、RNA生命体に必要なリボザイムを人工創製することで、生命の起源に迫ることを目標に掲げている。具体的な目標の一つに、脂肪酸生合成に必要な4つの酵素機能をもつリボザイム、すなわち(1)チオラーゼリボザイム、(2)3-ケトアシルCoA還元酵素リボザイム、(5)3-ヒドロキシアシルCoAデヒドラターゼリボザイム、(4)エノイルCoA還元酵素リボザイム、を創製することを計画した。平成17年度末には全てのセレクション戦略を確立した。平成18年度は、これらの戦略技術を駆使して、活性種のセレクションに挑んだ。 (4)を除く3つセレクションについては、活性種の濃縮が確認され、目的のリボザイムの単離に成功したかにみえた。しかし、活性種濃縮後のプールを様々なコントロールと比較した結果、(1)チオラーゼリボザイムおよび(2)3-ケトアシルCoA還元酵素リボザイムについては、活性種を釣り上げるために使用したビオチンヒドラジドの付加を触媒する活性種であることが判明した。このような活性種は以前レドックスリボザイムをセレクションした時には観測されておらず、おそらく(1)と(2)の活性種が極めてレアな活性種であるため、今回濃縮された活性種と競合した結果、目的のリボザイムは淘汰されてしまったのであろうと考えられる。これはセレクションでよく起きることとはいえ、戦略の立て直しを余儀なくされてしまった。一方、(3)については、上記に類似したビオチンチオールの付加反応を触媒する活性種が濃縮されてしまった。これも上記と同様の理由が考える。さらに(4)の実験では、いかなる活性種の濃縮も観測することができなかった。これらの結果を踏まえ、これまで蓄積したノウハウを最大限利用して、平成19年度の計画ではセレクション戦略を立て直し、目的のリボザイムに向け研究を推進する。 また、本研究の長期目標であるRNA生命体の創成とその技術的応用の一環として、上記の新規リボザイムの創製に加え、これまで研究代表者が数年に渡って研究を推進してきたアミノアシル化リボザイム(別名フレキシザイム)の基盤研究については、昨年度目標とした翻訳系内でのin situ転写・翻訳による特殊ペプチドの合成に成功した。現在、この結果を発表すべく、データを揃える実験を推進している。
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