(1)脂肪酸合成リボザイム創製:本来の計画では、脂肪酸生合成に関与する4種類のリボザイム創製を目指す計画であったが、精力的な実験検討を行ったにもかかわらず、残念ながらそのようなリボザイムの創製には至らなかった。しかし、その課程で5'末端のリン酸基を脱離しながらグアノシン5'位の酸化をNAD+依存的に行い、5'アルデヒドに変換するリボザイムOx4(次ページ図)の創製に至った。これまで2段階反応の協奏的還元反応を触媒するリボザイムの単離は世界初で、その触媒機構は注目に値する。 (2)フレキシザイム創製:本研究では、現在までに創製されたフレキシザイムの機能の向上を目指し、2種類の新規フレキシザイム誘導体を創製した。以下限られたスペースで詳細を述べることはできないため、その機能のみを報告する。(1)低Mg2+濃度で機能するフレキシザイム:既存のdFxに新たなアクセサリードメインを付加することで翻訳系内の10mM程度のMg2+でもアシル化機能をもつフレキシザイムの創製に成功した。(2)高水溶性脱離基を有するアミノ酸基質に選択活性性をもつフレキシザイム:脱離基に水溶性を高める官能基を導入した脱離基(ABT)をデザイン・合成し、dFxの誘導体aFxを創製した(論文掲載済み)。 (3)遺伝暗号リプログラミング 本研究は、フレキシザイムシステム(dFxとeFx)を駆使し、普遍遺伝暗号を初期化・改変(リプログラミング)する技術を開発、それを応用して様々な特殊ペプチドの翻訳合成法を開発した。本技術の特筆すべき点は、天然物として単離される非蛋白質製アミノ酸を含むペプチドの構造的特徴を抽出した特殊ペプチドをリプログラミングされた遺伝暗号に沿ってmRNA上の配列から合成できる点にある。本技術の開発に伴い、ペプチドの環状化を非還元結合で達成する技術やペプチド主鎖骨格にNメチル基やアルキル基、さらには探索技術も含めた汎用性の高い技術も合わせて開発した。その成果として2007年12月-2009年4月のわずか1年半年あまりで、18報に及ぶ査読付原著論文を発表している(全ての論文で基盤Sへの謝辞あり)。
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