研究概要 |
本研究では、狭いスケールで見た樹木と外生菌根菌の繁殖特性と広いスケールで見た樹木の遺伝地理的構造を、多数の種に関して解析し、一種の分子生態データベースを構築する。そのために、今年度は試験地設定、試料採集、マーカー作製を中心に研究を行った。 樹木の繁殖特性解析のため、(1)東京大学北海道演習林に試験地を設定し、主要な構成樹種ヤチダモ,カツラ,ハルニレ,オヒョウニレ、エゾマツ、トドマツの立木位置図を作製した。また、エゾマツ、トドマツについては、SSR多型マーカーを作製した。(2)多摩川河川敷に試験地を設定し、ニセアカシアの立木位置図を作製し、多型SSRマーカーを作製した。(3)西表島マングローブ林に試験地を設定した。ヤエヤマヒルギ、オヒルギの核SSR多型マーカーを作製した。(4)クロマツ採種園で、SSR多型解析のための葉のサンプリングを行った。 外生菌根菌の繁殖機構解析のため、(1)富士山御殿場口に試験地を設定し、いくつかの植生パッチから発生するキツネタケ属の子実体について、発生位置を記録した後子実体を採集した。そのうちウラムラサキの子実体から多型SSRマーカーを作製した。その多くは、キツネタケでも増幅し、この種でもSSRマーカーとして利用できることが解った。(2)東京大学富士演習林に発生するカワリハツについて、子実体の位置を記録した後採集した。この菌種についてもSSR多型マーカーを作製した。(3)東京大学演習林田無試験地で、広葉樹とアカマツが隣り合う場所の下にある外生菌根を堀取り、優占種を同定した。優占種は、場所毎に異なっていた。また、8リッターの各土壌サンプルからは多数の外生菌根菌種が検出された。 樹木の遺伝地理解析のため、(1)日本列島各地からダケカンバの葉を採集した。また、ダケカンバの核SSRマーカーおよび葉緑体SSRマーカーを作製した。(2)沖縄県先島諸島各地からヤエヤマヒルギ、オヒルギ、メヒルギの葉を採取した。また、ヤエヤマヒルギについては、葉緑体SSRマーカーも作製した。
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