研究概要 |
本研究では、2004年9月にイギリスで、ワークショップと中間成果報告会を行い、2004年11月に、ドイツにおける社会科学的日本研究会(VSJF)のベルリン大会、およびボッフム大学での国際女性学客員講座10週年記念シンポジウムにおいて、研究代表者が成果報告を行った。また、研究の中間成果を広く社会に還元し、研究グループ外部からの意見等を反映するべく、2005年2月19日に東京大学において、国際シンポジウム「経済危機の次代:診断し処方する-フェミニスト経済学の可能性」を開催した,(第19回東大社研シンポジウム)。 本研究は、グローバル化、ニュー・エコノミー、そしてジェンダーが交差する様(さま)を解明する。これらは、現代社会を考察する上で「鍵」となる3大課題であり、3課題の交差intersectionの性質は、種々の論争で解析のマトになってきた。本研究は、4つの確立した研究領域にぎける枢要な主張に挑戦している。すなわち、第一に、「労使関係と多様な資本主義」に対して、ジェンダー視点から批判的再検討をおこなう。第二に、「ジェンダー研究」に対しては、この分野で立ち上りつつある比較論争を発展させる。第三に「ニュー・エコノミー」論に対しては、そこでの概念化がこれまでジェンダーを顧慮しなかったこと問い直し、新たな概念化を行う。第四に「グローバル化」研究に対しては、そこで有力な単純な規制緩和説に挑戦する。グローバル化が規制緩和と「労働生活の質」の劣化を招くという言説に対し、ジェンダー視点では再規制化の過程も浮上するのであり、本研究はその複雑な動態に照明を当てる。グローバル過程による収斂と経路依存性による分岐を整序することを通じて、東アジア、米、欧のモデルを析出しつつある。 国レベルの制度ばかりでなくミクロレベルでも、仕事と子育ての両立支援策の利用実態、および家庭内ジェンダー関係について、詳細な聞き取り調査を行い、社会学的文化人類学的分析を進めてきた。(798字)
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