研究概要 |
本研究では、最先端のレーザー応用工学を導入し、氷床中の氷結晶変形機構の解明と流動に伴う氷中の環境・気候指標物質の挙動の解明を目的として、期間内に以下の研究を行う。 (1)現在開発中のレーザー干渉測長技術を用いて、氷の拡散クリープ領域でのナノメートルオーダーの微小変位の観測手法を確立する。 (2)これまでに我々が開発したレーザーアブレーションによる微小領域の含有不純物分析技術をさらに発展させ氷結晶中の不純物分布構造とその熱力学的挙動を調べる。 (3)氷床中のミクロ物理化学プロセスを実験室で再現し、氷床氷の結晶集合組織発達と含有不純物との相互作用を含めた氷床氷変形機構図の構築を目指す。 18年度は(1)については氷の熱変形および力学的性質を考慮してナノメートルオーダーの微小変位の観測が可能なホモダイン干渉計の製作を行い、室温および低温下での性能評価実験を行った.位相の異なった4つの干渉縞出力からリサージュ図形を得ることに成功し,これよりナノメートルの分解能を得ることが可能となった.また実際に氷をクリープ変形し,10-10s-1の歪速度の計測に成功した.19年度はさらに一桁低い歪速度の計測を可能にするため恒温チャンバー内の温度の安定化とポッケルスセルを用いた高精度計測を実施する. (2)については,質量分析器と試料を同じ真空チャンバに導入し分析する改良型装置を作成し,不純物を人工的に含有させた試料で測定を行い,一部の不純物でその不純物に対応したシグナルの検出が可能となった.しかし,多くの不純物で検出の検出が出来ていない.これらの不純物は沸点が高い傾向があり,現在の測定方法では分析時にアブレーションした試料が気化状態で存在していない可能性が高い.そこで,まずアブレーションされた不純物を気化状態で分析できるよう,質量分析器の測定質量数を固定し,高時間分解能で測定を行う方法に測定を変更する.そして,不純物を限定し,その二次元分布の測定を行い,粒界との関係を明らかにする.
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