研究概要 |
<レーザー干渉計による微小クリープ変位計測>変位測定を行なう温冷却セル内の温度は,半日間5mK以下の安定性を達成した.圧電素子を用いて周期的な強制変位を与えたところ,変位に対応するリサージュ波形が描けたことから,微小変位計測が可能となった.ただし,長時間にわたる氷の微小変位を測定するには,偏光面保存ファイバの外乱補償制御が不調で,リサージュ波形の中心が安定せず,新たな制御系を設計する必要がある. <レーザーアブレーションによる氷中の不純物分布測定>NaCl試料の測定で,質量数23の信号は,レーザー照射後150μsまでの間でピークを検出することができた.また2000ppmのNaClおよび純氷において質量数23の信号について調べ,NaClを含んだ氷で質量数23の信号は存在するが純氷では認められず,氷中のNaの測定が可能となった.低濃度の氷試料で検証する必要はあるが,レーザー照射の痕跡は微小であり,不純物分布の測定が可能な段階に近づいた. <氷床氷の結晶集合組織発達と含有不純物との相互作用を含めた氷床氷変形機構図の構築>南極とグリーンランドの氷床コア結晶組織解析を実施し,氷床の表面から深部にわたる全域で動的再結晶が起きていること,氷床浅部での結晶粒の成長は歪誘起粒界移動による動的結晶粒成長であることを明らかにした.さらに,無気泡多結晶氷の結晶粒成長実験を行い,粒界易動度はこれまで考えられていたものより2,3桁大きいこと,これまで用いられている結晶粒成長速度とその活性化エネルギーは気泡による粒界移動阻止効果と歪による影響が複合した見かけ上のものでることを明らかにした.
|