研究概要 |
本研究は,90年代後半より急速に進展した赤外線観測による星周辺の岩石的粒子の観測の結果をふまえ,固体粒子形成カイネティクスとその物理的基礎を実験的に理解し,その結果を用い様々な星周環境における粒子の成長を理論的に予測し,星の進化と粒子進化の関係を解明することをめざしている。 本年度の成果として:(1)太陽系存在度にほぼ等しいMg:Si〜1:1で酸素を含む系の実験をおこない、高温から低温までの領域で凝縮物を得た。温度低下にともない化学組成、構成物質が連続的に変化する。熱力学的検討とあわせ、フォルステライトの不均質凝縮に必要な過飽和度を決定することに成功した。凝縮温度1200。Cで約50、もっとも低温は約800。C、係数は10000と決定された。 (2)フォルステライトの蒸発/凝縮が温度、水素圧に応じ、異方性を示すことが明らかとなった。すなわち条件により安定な結晶形状が異なり、赤外スペクトルを計算すると、条件に応じた特徴的なピーク位置、ピーク強度が出現することがわかった。星周の赤外線天文観測のピークから、ダスト形成条件の推定を可能とした。 (3)冷却する原始太陽系円盤中における、ガスと凝縮固体の分離による化学分別を、実験・理論研究の総集成として検討した。分離するダストサイズとガスの冷却速度の関数として、ダスト分離程度がことなり、円盤の熟進化タイムスケール(>1000years)では、ほとんどの場合、部分的あるいは完全にダストはガスから分離されることが明らかとなった。隕石がこの分離固体から形成される微惑星であるとすると、冷却タイムスケールが1000年オーダー、分離ダストサイズがミクロン程度と制約でき、円盤の比較的希薄領域においてダスト分離がおこったことが明らかとなった。
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