研究分担者 |
DEL carpio C.A. 東北大学, 大学院工学研究科, 助教授 (20231053)
久保 百司 東北大学, 大学院工学研究科, 助教授 (90241538)
高羽 洋充 東北大学, 大学院工学研究科, 助教授 (80302769)
遠藤 明 東北大学, 大学院工学研究科, 助教授 (90344704)
古山 通久 東北大学, 大学院工学研究科, 助手 (60372306)
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研究概要 |
近年,環境・エネルギー対策,ダウンサイジング等の要請から微小領域でのトライボロジーの重要性が高まっている.特に最近では,化学反応を含むトライボケミカル反応の解明に対する要求が強くなってきた.しかし,世界的にもトライボケミカル反応を解明可能な理論計算プログラムは皆無である.そこで本研究では,研究代表者らが開発してきた分子動力学法に基づくトライボロジーシミュレータTRIBOSIMとSCF-Tight-Binding近似に基づく高速化量子分子動力学計算プログラムColorsを統合化し,トライボケミカル反応ダイナミクスを解明可能なトライボケミカル反応シミュレータTribo-Colorsおよびハイブリッド量子分子動力学法シミュレータHybrid-Colorsを世界に先駆けて開発し,電子レベルでのトライボロジー材料・プロセスの理論設計を行うことを目的とした. エンジンオイルのフリクション低減用添加剤であるジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(Mo-DTC)の酸化鉄基板における化学反応ダイナミクスの解析にHybrid-Colorsプログラムを適用したところ,Mo-DTC分子のアルキル基が解離し,最終的にMo-S結合が酸化鉄基板上に残るという化学反応ダイナミクスが観察された.またHybrid-Colorsをエンジンオイル用リン酸エステル系極圧添加剤であるリン酸トリメチルのトライボケミカル反応ダイナミクスの解明に適用したところ,摩擦条件下の場合のみ鉄とリン酸トリメチルの酸素原子との結合が形成され,摩擦しない条件下では結合が形成しないことがわかった.これは,化学反応を扱いつつ機械的摩擦の効果をシミュレートすることに成功したことを意味する.このように,量子論により化学反応ダイナミクスを追跡し,かつ機械的摩擦が化学反応に与える効果を明らかにすることにはじめて成功した.
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