研究課題/領域番号 |
16106003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮本 明 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (50093076)
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研究分担者 |
DEL Carpio Carlos A. 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (20231053)
久保 百司 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90241538)
高羽 洋充 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80302769)
遠藤 明 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90344704)
古山 通久 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (60372306)
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キーワード | ハイブリッド量子分子動力学法 / トライボケミカル反応 / シミュレータ開発 / 潤滑油添加剤 / SCF-Tight-binding近似 / 高速化量子分子動力学法 / 化学反応 / 機械的摩擦 |
研究概要 |
ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)は自動車エンジンオイル添加剤として幅広く使用されている。MoDTCは境界潤滑下、摩擦界面に二硫化モリブデン(MoS_2)を主成分とする境界膜を形成することで低摩擦状態を実現する。MoDTCからMoS_2境界膜が生じる化学反応プロセスにおいては,例えば摩擦面と非摩擦面での分解生成物の違いなどが研究されているが、金属表面による触媒作用、摩擦熱、剪断力などの分解反応を誘発する因子を含め詳細な反応メカニズムは明かではない。そこで、本年度は、MoS2境界膜間のすべり現象に起因する摩擦緩和メカニズムを明らかにするため、量子/古典ハイブリッド法に基づくトライボケミカル反応シミュレータを用いて、MoS_2境界膜を構成するS原子間のエネルギー、距離を解析した。その結果、異なる層間のS原子同士が、最も接近したときにエネルギーが正の極大値をとり、かつクーロンエネルギーの寄与が約7割を占めることが分かった。従って、S原子間のクーロン反発に基づくすべり現象がMoS_2境界膜の摩擦緩和の起源であることが明らかにされた。すべり現象については、原子ダイナミクスの解析によっても確認された。以上のように、量子/古典ハイブリッド法に基づくトライボケミカル反応シミュレータによりMoDTCの分解反応メカニズム、生じたMoS2境界膜の摩擦緩和メカニズムを明らかにし、実験および従来理論計算手法では困難な摩擦中に起こる添加剤の分解反応およびトライボロジー特性を解明することに成功した。なお、これをもって本年度の目的を完遂した。
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