研究概要 |
当該研究では,これまで研究を進めてきたピラミッド型を中心とした3次元微小光共振器内部に小数の量子ドットを埋め込み,共振器効果による光・電子相互作用の増大,材料の選択による励起子振動子強度の増大により,真空場ラビ分裂の観測を目指している。 今年度はこれまでの〜5000より高い共振Q値を持つ光共振器の開発として、昨年度の分布反射ミラー(DBR)によるピラミッド底面の反射率向上の検討を進めた。昨年度の実験結果の理論解析によると、反射率90%から99%程度に高められるとピラミッド共振器とDBRの位相関係に余り依存せず高い反射率を保つことが分かった。これを実現するために、ブレーメン大学との共同研究を行い、ZnSe/MgS超格子を用いた99.9%の反射率を持つDBRを形成し、この上にピラミッド構造の選択成長の検討を進めている。現在のところ成長前の表面クリーニングの最適化を最適化することに傾注している。また材料的な観点からは振動子強度の大きな酸化物半導体について検討し、ZnO表面にCdOの量子ドットを形成することに初めて成功した。この酸化物量子ドットを利用することができれば、振動子強度の増大によって電子系と光子系の強結合状態を実現できるパラメータ範囲をさらに広げることができ、真空ラビ分裂をより再現性よく実現できる期待が高まる。 微小光共振器へ光子を入出力する効率を上げる方法として、ソリッドイマルジョンレンズ(SIL)の検討を進めた。大気中から入射する光はその波長程度に回折広がりを示すため、波長程度の大きさしか持たないピラミッド共振器(他の共振器でも同じ問題が起こるが)との結合効率が低下する。SILを用いることによって半値全幅をSIL無しの〜1/4である〜190nmまで収束できることを示し、さらに検討を続けている。また単一量子ドットの形成、その単一光子発生過程についても詳細に検討し、単一光子レベルでのコヒーレント制御の検討を進めつつある。
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