研究概要 |
電子系と光子の相互作用を,その位相関係も含めてコヒーレントに制御することを目指した研究が活発化している。これが可能になれば,電子系の波動関数そのものを,位相も含めてコヒーレントに制御することができる。 今年度は,単一量子ドットから発生する励起子分子-励起子の時系列発光において,両者に強い偏光相関があることを偏光相関測定から確認した。またその特性のレート方程式解析より,励起子状態間のスピン反転時間は3.6nsと発光寿命の1nsよりも長く,スピン状態が比較的安定に保たれることを見いだした。さらに量子ドットに隣接する濡れ層(WL)を円偏光励起することにより,量子ドットから60%程度の高い円偏光度を持った単一光子が発生できることを見いだした。これは量子ドットに共鳴しないWL励起で磁場を印可しない状態で観測された世界最高の円偏光度である。その理論解析から,WLから量子ドット状態へのエネルギー緩和プロセスにおけるスピン反転は,5%程度と極めて低く抑えられていることがわかった。これはスピン制御された電子注入で,円偏光制御した単一光子を発生する発光ダイオードを実現する上で極めて重要な発見である。 これと並行して高い共振Q値を持つ微小光共振器の作製・検討を行い,フォトニック結晶構造を用いることにより表面から観測される発光強度が10倍以上に増大することを確認した。また最近,フォトニック結晶よりも製作が容易でかつ共振Q値が8万程度と高くできる光閉じ込め構造をFDTD計算で見いだし,今後その製作を進める予定である。
|