研究概要 |
本研究では、次世代の超高密度磁気記録媒体材料を実現するために基本的に重要な、硬質強磁性ナノ粒子の構造と磁性の関連を明らかにする研究を行ってきた。今年度は最終年度に当たるため、以下のように、本研究で調べて来たLlo-Fe合金系(FePd, FePt)ナノ粒子の規則化と粒子サイズとの関係、および、これらと磁気特性との関係の詳細を知る研究を行い、研究全体のまとめを行った。 (1)収差補正電子顕微鏡によるLlo-FePdナノ粒子の規則化構造の詳細な観察、および、(2)電顕内試料二軸傾斜加熱ホルダーを用いたLlo-FePdナノ粒子の規則-不規則変態の直接観察を行った。(1)については、特に5nm以下のサイズのLlo-FePdナノ粒子において規則領域と不規則領域が混在し、大きな格子歪を伴うことが示された。また、(2)では、不規則状態からの降温により規則化が進行する時、約8nm以下のサイズの粒子では規則化の進行が困難なこと、などが示された。これらの結果と本研究で既に得られている構造および磁性データとの比較から、次のことが判明した。(1)Llo-規則合金ナノ粒子では、粒子サイズの低下(8nm以下)とともに規則度(S)は大きく低下し、規則化臨界サイズ約2nmで規則構造は消失(S=0)する。規則相が粒径の低下とともに不安定となる要因として、規則相/不規則相界面に起因する格子歪を考慮する必要がある。(2)硬質磁性⇒超常磁性の超常磁性臨界サイズの観測値は、完全規則構造S=1.0で予想される超常磁性臨界サイズ(FePt〜3nm, FePd〜5nm)よりも大きい(FePt〜6nm, FePd〜7nm)。これは、8nm以下のサイズでの規則度低下に伴い、規則/不規則界面歪みも関係して結晶磁気異方性が急減することによる。原子の規則配列化により結晶磁気異方性を上げ、硬質磁性を発現させる規則合金ナノ粒子の場合、「規則相の熱力学的安定性に関するサイズ依存性」が結果的に結晶磁気異方性に大きく影響する。理想的規則化状態(S=1.0)での超常磁性臨界サイズ(FePt〜3nm, FePd〜5nm)付近のLlo-Fe系ナノ粒子・超高密度磁気記録媒体の実現は不可能と結論される。
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