研究課題/領域番号 |
16107002
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
和田 正三 基礎生物学研究所, 光情報研究部門, 特任教授 (60011681)
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研究分担者 |
鐘ケ江 健 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (70264588)
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キーワード | phot / フォトトロピン / シロイヌナズナ / 葉緑体運動 / 光逃避運動 / アクチン / neo1 / シダ前葉体 |
研究概要 |
葉緑体は強光下では光から逃げ(逃避運動)、弱光では光に集まる(集合運動)。光受容体は青色光受容体フォトトロピン(phot)であり、逃避運動の光受容体はphot2、集合運動の光受容体はphot1とphot2である。シダ植物でphotの他に、フォトトロピンとフィトクロムの融合したキメラ受容体ネオクロム1(neo1)が、赤色光で誘導される逃避運動、集合運動、光屈性の光受容体として働いている。本研究の課題は、photおよびneo1から発せられる集合反応と逃避反応の信号伝達系と、その後の葉緑体の運動機構を解明することが本研究の目的である。本年度は、葉緑体の移動に働く微小アクチン(cp-actin)の分布およびその挙動を詳しく解析した。強光下で逃避運動に関わるcp-actinは強光照射後1分以内に消失し、その後2分以内に再出現する。cp-actinは非常にturn overが早いので、蛍光顕微鏡による高速撮影が必須であるが、そのような顕微鏡を所有する理化学研究所の中野明彦教授と共同研究を行い、0.3秒に一コマの速度で撮影することに成功した。この映像を使用して3次元の立体像を再構築した結果、cp-actinは葉緑体と細胞膜との間に局在し、葉緑体の細胞膜から離れた部分には存在しないことが分かった。またcp-actinが強光によって短くなり消失して行く過程は、葉緑体の端に向かって起こることが分かった。再出現が起こる場合にも、葉緑体の端と細胞膜が接する部分から起こることが分かり、恐らくcp-actinの重合、脱重合は葉緑体の端に存在するactin重合タンパク質によるものと思われる。このactin重合に関わるタンパク質は我々が明らかにしたCHUP1であると予想される。CHUP1の大腸菌内、昆虫細胞内での発現は非常に難しかったが、本年度、麦芽無細胞系を使用して、全長の合成に成功したので、今後は合成CHUP1タンパク質を使用してのin vitroでのcp-actinの重合能とその最適条件を検討する。
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