研究課題/領域番号 |
16107005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西田 宏記 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60192689)
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研究分担者 |
熊野 岳 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (80372605)
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キーワード | ホヤ / 胚発生 / 胚誘導 / 局在mRNA / 発生・発化 / 脊索 / 母性mRNA / 発生運命 |
研究概要 |
本研究では、ホヤの初期発生過程に関して卵内で局在している因子と誘導的細胞間相互作用の二つのテーマに関して研究を行うことを目的としている。 誘導的細胞間相互作用に関して以下の知見を得た。脊索はFGFシグナルによって32細胞期に胚の前方に誘導されるが、後方の割球はFGFシグナルを受け取っても脊索に誘導されることはない。脊索が誘導されるためにはその割球でFoxAとZicが応答能因子として発現する必要があることをこれまでの研究によって明らかにしてきた。今回、胚の後方に局在しているPEMという母性mRNAにより、胚後方においてFoxAとZicの発現が抑制されることにより後方の割球が脊索誘導応答能を欠失していることが明らかとなった。これにより母性因子の偏りから始まり、特定の細胞が脊索という細胞運命を獲得するまでの出来事を一連のストーリーとして理解できるようになった。 卵内で局在している因子に関しては、上記のPEM mRNAが脊索の応答能を制御しているのにとどまらず、最終的に始原生殖細胞に受け継がれていくことにより生殖細胞系譜の割球で初期胚のzygoticな遺伝子発現全体を抑制しており、分化した細胞への道を生殖細胞が歩み始めてしまわないようにしているらしいことが徐々にわかりつつある。 また、植物極から生じる内胚葉の発生運命過程においては、ベーターカテニンが核内へ移行することが重要なステップであることがわかっている。これには、植物極に局在する母性因子が関わっていることがわかっているがその分子的実体は不明であった。今回、一時的に植物極に局在する母性Wnt5のmRNAの機能阻害実験を行ったところ、内胚葉が消失するという結果を得た。しかし、母性Wnt5の分布と移植実験により得られている内胚葉決定因子の分布が完全には一致しないため、母性Wnt5は必要であるが充分ではない可能性もあり、現在、それらの可能性の検討を行っている。
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