研究概要 |
我々は遺伝子の機能解析を通じて生殖腺の性分化機構を研究し,これまでに性分化を制御する多数の遺伝子(素因子)の機能解析を行った。同時に,これらの素因子による遺伝子カスケードの解明を発展的研究対象と位置づけ,生殖腺の性分化に異常をきたす各種遺伝子破壊マウスやトランスジェニックマウスの作製を行ってきた。本研究はこれらのマウスを用いた遺伝学的解析によって,素因子間の関係を遺伝学的に体系化すること,そしてその実体を生化学的に同定することで,性分化を制御する遺伝的基盤の理解をめざし、(1)遺伝子改変動物を用いた遺伝学的解析と(2)転写因子を取り巻く複合体の精製とその解析を行った。 (1)遺伝子改変動物を用いた遺伝学的解析-本年度はAd4BP/SF-1遺伝子とM33遺伝子の間の関連を解析した。二つの遺伝子はともに生殖腺の発生に不可欠であること、また遺伝学的にはM33がAd4BP/SF-1遺伝子の発現制御を行っていることが明らかになった。そこで、M33抗体を作製し、Ad4BP/SF-1遺伝子座全体を対象としたクロマチン抗体沈降法による解析を行ったところ、Ad4BP/SF-1遺伝子の5'側と3'側にM33の結合が認められた。特に5'側領域は遺伝子の境界を作っていることを示唆する結果を得ていた領域と一致し、この領域の形成にM33を含むポリコーム複合体の関与が示された。 (2)転写因子を取り巻く複合体の精製とその解析-生殖腺の分化に不可欠なAd4BP/SF-1やSox9は翻訳後にSUMO化による修飾を受け、その転写活性が制御されることを明らかにしてきた。このSUMO化修飾されたAd4BP/SF-1を認識する因子を精製したところ、クロマチンリモデリング因子様の構造をもつ因子が単離された。この因子の機能解析を通じ、SUMO化による転写活性の制御機構の解析を行っている。
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