研究概要 |
高齢社会の加速化に伴い,老化,病的老化の防止と健やかな加齢が社会的に強く求められている。老化と老年病の鍵を握る制御因子として核内受容体が注目される。本研究では老化における多彩な核内受容体の作用メカニズムを知り,その老化,病的老化防止作用を解明するために,各受容体の組織特異的な発現や分子メカニズム,情報伝達メカニズム,老化ならびに病的老化との関連を明らかにすることを目的とする。核内受容体を介する作用メカニズムの解明には,受容体の生体内での機能解析とともに,共役因子や下流標的因子群の性状解析が必須であり,本年度は核内受容体に関してはER,AR,ERR,SXR,PPARを対象とし,核内受容体標的因子としては我々が同定したEfp/TRIM25,EBAG9,COX7RPに着目し,それらの新しい機能を明らかにし,老化に伴い増加する前立腺癌,乳癌や感染症,骨粗鬆症,変形性関節症における役割を示唆した。また,細胞膜や細胞内シグナル伝達系を介するいわゆる核内受容体のnon-genomicactionが想定されており,エストロゲン受容体が膜で結合する蛋白質複合体に関してアセチル化と関わる機能を解明した。さらに,核内受容体関連因子のコンディショナルトランスジェニック動物とノックアウト動物を用い,運動器系組織ならびに肝臓組織における過剰発現により,表現型の変化を見出し,骨粗鬆症をはじめとする老年病における役割を解析した。一方,老化疾患モデル動物,核内受容体遺伝子改変動物により,各臓器,組織における老化と関連した形質を調べ,関連因子の発現変化とその制御機構,各種の老化に関連する刺激による影響を解析し,核内受容体関連因子の老化と病的老化における役割と診断,治療の分子標的としての意義を探っており,最終年度へ向けて研究が順調に進展している。
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