研究概要 |
本研究の究極的な目的は遺伝子組み換えによって合成した骨誘導活性ペプチド(骨形成蛋白、BMP)を利用して新しい骨再生技術を確立し、臨床に汎用できるものとすることである。平成18年度実施計画に沿って研究を進めた。 1.ビーグル犬の骨盤欠損モデルでの個別的骨欠損再建システムの有用性検証 骨盤CTイメージデータで任意の形態の骨腫瘍を仮想しその切除計画とその結果生ずる骨欠損像を仮想し、CTデータを用いて仮想欠損部の形態と同一の人工材料(ハイドロキシアパタイトなど)を切削成型し、表面にBMP含有材料を塗布した。一方そのCTデータを用いたナビゲーションによって計画した骨盤を切除し、BMP含有生体材料をはめ込んだ。術後4週で骨欠損部に骨新生による再生修復が見られることを確認した。 2.BMP用合成担体の選定と至適化 微量のBMPを生体内で有効に作用させるためにBMPを局所徐放するdrug delivery system(担体)が必要である。我々は担体としてある種のpolylactic acid/ polyethyleneglycole共重合体(PLA-PEG)が有用であることを報告した(Nature Biotech.2001)。その有用性をヒアルロサン酸、ethylene glycoleと比較し,あらためて優越性を確認した。PLA-PEGに対するBMPの至適混合比はマウスで0.003%であること、ヒトでは0.1%と推計した。(Biomaterials 2006) 3.大腸菌で合成した活性BMP応用に関する研究 従来の動物細胞(CHO細胞)で合成されたBMPは生産効率の低さから高価となっていた。大腸菌で合成した単量体BMP分子を生物活性体である2量体分子に変換する技術が開発され、その発明者と共同でその分子の骨誘導活性の検定を行った。その結果CHO由来BMPのほぼ90%の活性があることを明らかにした。この技術によってBMP価格の大幅な低廉化が期待できることを示した。 4.BMPの細胞内シグナル伝達促進系の検索 Smad1,4,5を介したBMPシグナル伝達系でのprotein kinase A系の促進効果の機序解明を行った。BMPの早期応答遺伝子のpromotor領域のCRE配列がBMPのシグナル伝達に促進的に働くことをあきらかにした。(Bone, BBRCに投稿中)
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