研究課題
研究の背景と目的:再生医療が注目されてから久しい。しかしその研究成果の実用化によって患者の治療に汎用されているものは現時点では極めて少ない。しかし、骨再生の領域では骨再生修復反応の主役とされる生理的活性蛋白である「骨形成蛋白」(BMP)の同定、遺伝子組み換え体(BMP-2,BMP-7)の臨床応用が限定的に可能となっている。これらをより効果的に用いれば新しい骨再生技術として骨損傷や骨欠損の修復が容易となり汎用が期待できる。その障害多なっているのがBMPの薬物伝達系の研究の遅れとBMP産生コストが高いことである。本研究はそれらの問題を解決し、安全、安価で汎用性の高い技術を開発し、実用化することであった。研究事項:(1)BMPの有効なDDSの開発。現在臨床利用されているBMPの担体であるウシ由来コラーゲンに代わる安全かつ安価な合成ポリマー(ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体)を開発し、その有用性について検証した。マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジでBMPの担体として有効に作用することを確認した。(2)BMPの活性促進法の探索。ヒトはBMPに対する応答性が低く多量のBMPを要する(1cm^3の骨の形成に約1mgのBMPを要する。)ために高価な医療技術となっている。経済性を改善するためにBMPの生物作用を増強する薬剤の探索を行った。その結果、BMPの標的細胞である間葉系細胞内のcyclicAMPの濃度を高める作用のある薬剤(phospho diesterase阻害薬、PDE2のEP4受容体アゴニスト(ONO-4819)、カテコラミン等を担体に微量混入するBMPの骨誘導活性が約2倍程度促進できることを明らかにした。その機序はProtein kinaseAの細胞内伝達系によってBMPの応答遺伝子発現が促進されることであることを明らかにした。(3)複合人工骨材の開発と有効性検定。われわれが開発したBMP用担体ポリマーはBMP担体として優れているが粘着性が強く取り扱いが困難であるため、実用に適した担体への改良を加えた。すなわち、吸収性生体材料であるβTCP(βtricalcium phosphate)粉末と等量混合し粘土状とした。BMPの担体としての有効性を検索した。この生体吸収性で可塑性骨再生用材料の有効性はウサギの長官骨欠損再生修復、腰椎固定,犬の股関節周囲骨欠損修復、羊の腰椎固定などで確認した。またBMPによる骨再生医療の経済性を画期的に高めるBMP生産技術をドイツから導入した日本の企業と共同研究を最近開始し、BMPの大量生産と臨床治験に向けた前臨床試験に入る予定である。(4)人工合成物(BMP、ポリマー、生体吸収性材料)による新しいテーラーメイド化骨再生システム開発:臨床では個々の患者の骨欠損部の部位、形態は多様である。それぞれの修復すべき骨欠損部分のCT画像のコンピューターデータを用いて予め欠損形態に相当する人工骨をCAD(computer aided design)systemde切削作製しBMP/DDSto複合して骨欠損部の骨再生を正確かつ短期に達成する技術システムの構築を行った。ビーグル犬の骨盤に作成した骨欠損をその技術によって修復可能であることを確認した。この技術を使えば、骨移植などのような侵襲を加えることなく確実に骨再生が可能となるものと期待でき、また新しい医療産業部門となるものと期待できる。
すべて 2007
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