研究概要 |
昨年度(平成18年度)の段階で,比較的近い未来(2〜3年先)において必要な企業戦略や社会活動を,ある程度互いの状況を理解しあえるメンバーが参加する場合に,本研究の開発システムはいずれも有用であることが分かっていた。しかしながら,10年以上先の社会において重要となる技術の開発戦略を考えたり,同じ目的を共有しながら日常的な注意の対象が大きく異なる異業種の専門家が発想をする場合には,互いのアノテーションやノード移動履歴の意味に共感することができず,シナリオマップがわれわれの狙いを満たすことは困難であることも明らかとなっていた。 今年度は,この問題の解決を行い,シナリオマップ・システムが実用性を認められる段階に達するように研究を進めた。この課題を解決する方法は幾通りかあったが,遠隔ではなく同一空間内における,あるいは参加者が現在体をおく空間の映像を互いに見せ合うような,空間の共有感を有するような議論の環境を構成することが最も本質であった。すなわち,ユーザが遠隔に存在する場合にはネットワーク経由で議論を行う前に問題意識を共有する会合を行っておく。さらに, ・タッチパネル式のシナリオマップによる空間共有感の実現 ・シナリオマップ上でプレイする新たな発想ゲーム「イノベーションゲーム」を開発 という二つの技術を実現し,さまざまな視点を持つ参加者が共同で新たな社会システムを考案するような場が形成できることを見出した。特に,イノベーションゲームについては,このプロジェクトでは萌芽を導いたばかりの段階であるが,研究期間が終了した現在,企業における特許戦略や製品開発,市場開発戦略に向けた一層の展開をめざし,新しい共同研究,受託研究が20年4月以降に始動している。
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