研究概要 |
本研究では,能動カメラを用いて人間がカメラの方向を見ているか否かを判定するという「被視認識」の問題を設定し,これを下記部分問題に分けた上で,それぞれを解くことによって解決しようとしている.1)能動カメラによる顔領域の検出・追跡と,ズームアップ撮影,2)ズームアップされた顔画像からの視線方向の計算,3)被視の状態にあると判定された場合,カメラを動かし,被視の状態が継続するか否かを調べ確認する. 1)に関しては,我々が先に提案した最近傍識別器を用いた色ターゲット検出法を拡張し,「弁別度」なるものを定義した.これは,「対象の色にどれくらい近いか」ということと「非対象の色からどれくらい離れているか」という2つの尺度を統合したものであり,[0,1]の値を取る、この弁別度が0.5のとき,ちょうど最近傍識別器の識別境界上の色となるため,この量を用いてターゲット検出を行うことができる.また,弁別度は照明等の変化によって色が変化してもある程度の値を保つので,弁別度の高い画像領域を探し続ければ,対象追跡を行うこともできる.これを,視点固定型カメラ2台と,視点固定型の平行ステレオカメラの上で実現し,対象の検出と追跡を行なうシステムを構築した.人の肌色を教示した場合,ほぼ100%の確率で人物頭部を撮影し,能動追跡を行ないながらその三次元位置が計測できることを確認した. 2)に関しては,前年度から継続して研究を行っているアイモデルとCONDENSATIONを用いた実時間視線方向推定アルゴリズムの開発を行い,MIRU2005で発表しインタラクティブセッション優秀賞を受賞した.この研究に関しては,大学外から実用化の具体的な問い合わせがある.この方法は,我々が行ってきた,Two Circle法(平面上に存在する2つの円を底面とする2つの傾斜円錐から,その切断面がともに円となる平面を推定することで,カメラに対する平面の傾きを求める方法)に基づくものである.眼球の場合にも,白目と黒目の境界線が真円であり,十分遠方を見ている場合,それらが互いに平行な平面上に存在するという仮定が成り立てば,同様の方法で視線方向の推定が行える.この研究成果はECCVなどの国際会議PRMUなどの国内会議で発表を行なった.この一方で,画像上での黒目の重心位置と,鼻孔の位置関係から視線方向を推定する研究も行っている.この研究では,黒目と鼻孔の検出を行い,視線方向との写像関係を当研究室で開発したPaLM-Treeを用いて学習している.これは,2006年度のMIRUで発表を行なう予定である. 3)に関しては,現在電動車いすに上記能動カメラを取り付けたシステムを開発しているところである.
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