研究概要 |
(乾)到達把持運動の到達成分(手の移動の制御)についても,精度予測制御の観点からモデル化を行った.手の移動の運動指令にはエネルギー消費と運動ノイズという二つの効果が伴うが,運動全体の実行におけるエネルギー消費と最終的な運動誤差の二つを最小化するような運動指令系列を生成する制御モデルを提案した.さらに,この到達成分の運動制御モデルと前年度までに提案した把持成分の制御モデルを統合し,精度予測による到達把持運動の制御モデルを完成させた(Takemura et al.,2007). (斎木)視触覚間の時間情報処理に関して,(1)視触覚間の主観的な同時は可塑的であること,(2)明示的な同時感覚は感覚統合の際に用いられる同時とは異なる種類の時間表象であること,が示唆された. (杉尾)本実験では,運動プログラムの特性について,運動の種類(パントマイムか実物体への運動)と取っ手の向き(左または右)といった要因を操作することで検討した.その結果,運動を行った手と取っ手の向きが適合している場合は,習慣的な動作によって獲得された内部表象に基づいてスムーズに運動を行うことができるのに対して,適合していない場合は,視覚的なフィードバックを利用しながら手形状が修正されることが明らかにされた. (笹岡)能動的運動によって後の物体認識の促進が起こる条件について検討を行った.その結果,能動的運動による物体認識の促進には,能動性だけではなく,手と物体の運動方向が一致していることが重要であることが示された.このことは,手を回転させたときの運動系からの情報と視覚情報の間の相互作用によって,視点変換規則が獲得されていることを示唆している.
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