研究課題/領域番号 |
16200023
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
澁木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40146163)
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研究分担者 |
工藤 雅治 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (80153310)
菱田 竜一 新潟大学, 脳研究所, 助手 (90313551)
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キーワード | フラビン蛋白蛍光 / 脳機能イメージング / 聴覚野 / 皮質内神経回路 / 退色 / Missing fundamentals |
研究概要 |
マウスの経頭蓋的フラビン蛋白蛍光イメージングによってMissing fundamentals(F0)によると思われる聴覚野神経活動の画像化に成功した。幾つかの比較的簡単な整数比からなる振動数の音を同時に聞かせるとき、その最大公約数の音(F0)が聞こえることはこれまで心理学的な解析から判っていたが、それが如何なる脳内機構で聞こえるのか、不明であった。ところが最近聴覚野においてF0に応するニューロンが存在することが電気生理学的な解析により明らかにされた。我々は聴覚野が音の高さによって異なる領野が応答することに着目し、20kHzと25kHzといった比較的高音を組み合わせて聞かせると、本来応ずるはずのない5kHzの領野が反応することを見つけた。ちなみに19kHzと26kHzの組み合わせのように、単純な整数比で表せない場合はこのような現象は出現しない。さらにこの応答がどのような脳内機構で生ずるのか、解析を進めた。可能性としては(1)蝸牛から聴覚野に至る聴覚伝導路で高音側から低音側にシナプス入力が収束し、F0に対する応答が形成される、(2)聴覚野に情報が達した後、皮質内経路によって高音側から低音側へシナプス入力が収束し、F0応答が生ずる、の二つである。このうち、我々は(2)の仮説を支持する結果を得た。則ち20kHzと25kHzの反応を示す領域にフラビン蛋白の励起光を長時間当てることによってエネルギー代謝を不活化した。このように励起光を長時間当てることによってシナプス伝達が抑えられることは予めスライスを用いた実験によって確認している。この状態でさらに20kHzと25kHzの組み合わせを聞かせると、5kHzの領域に活動が出現しなかった。しかし直接5kHzの音を聞かせたときには活動が見られた。これらの実験結果は(2)の仮説、則ち皮質内回路によってF0に対する応答性が生ずるという可能性を支持するものである。
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