研究概要 |
1.培養細胞を用いた天然物の探索;Oct4・GFPトランスジェニックマウス胎子より樹立した胎児繊維芽細胞を用いて,Oct-3/4遺伝子の発現を誘導する天然物をスクリーニングした。すなわち、天然物を原形あるいは刻で購入し、ホモゲナイズ後遠心して上清を採取し、凍結乾燥後培地に10,1,0.1,0.01,0.001mg/ml添加した。ついで、添加培地で繊維芽細胞を2〜7日間培養し、GFP観察用専用顕微鏡下で観察して、GFPを発現する細胞数と発現の強度を計測した。用いた生薬は,滋養強壮薬、不妊治療薬、傷の治療薬、健康栄養食品、種々の漢方薬等を中心とする506種である。その結果、4種の生薬水抽出物中に、Oct4遺伝子発現を誘導する活性を持つ事が判明した。しかしながら、誘導活性は極めて弱かったことから、これらの4種の生薬を用いてメタノール抽出を行った。Oct4遺伝子の発現の有無を調べたところ、No.212ならびに378生薬に弱い活性を認めた。また、これらの生薬処置体細胞よりmRNAを抽出後、リアルタイムPCR法でOct4mRNAの発現の有無を調べたが、明確な結果は得られなかった。2.初期胚を用いた探索;過剰排卵処置マウスから回収した初期胚を用いて、生薬抽出物が発生能や胚盤胞形成時期に及ぼす影響を検討した。その結果、発生能の向上や分化時期に影響する生薬は見られなかったが、得られた胚盤胞の細胞数が、対照区に比べて20%以上増加する生薬が5種認められた。また、生薬Nos.63、38、86では0.1ug/mlの低濃度でも初期胚の発生を完全に阻害する予想外の成果が得られた。生薬63と86の抽出物の主要成分は共通する事が判明している。化学合成されている薬剤を用いて初期胚の発生能への影響を調べたところ、生薬抽出物と同様に完全に発生能を阻害する事が判明した。現在、これらの生薬抽出物が動物避妊薬として有用であるかを検討している。3.ウシ未受精卵細胞質中に、核の初期化誘導に関わる蛋白質(リン酸化TCTP)を同定し、あらかじめリン酸化TCTPを導入した体細胞を核移植に用いると、正常なクローンウシが高率に得られる事を明らかにした。
|