研究概要 |
本年度は,前年度で構築したin vitro実験系を用いて,ミクロ流路内血流のPIV流速計測を行うとともに,粒子法シミュレーション手法を拡張し,血流中における血小板の生化学的な活性化,赤血球の変形運動,ならびに血小板と赤血球の連成効果について検討した.得られた成果は,以下の通りである. 1.ミクロスケールにおける血流動態観察 血小板モデルとして微小蛍光粒子を用いて,ミクロ経路内における微小蛍光粒子の運動挙動をMicroPIVシステムにより観察した.さらに,同システムを用いた計測により,赤血球の有無に応じた血流速度の違いを示した. 2.血小板の活性度変化を考慮した粒子法シミュレーション 粒子法シミュレーションを拡張し,血小板の活性度変化を考慮した二次元シミュレーションを行った.その結果,本シミュレーションにより,実験的に観察される,活性度変化に応じた血栓形成が定性的に表現された.より定量的なシミュレーションを行うため,三次元シミュレーションへの拡張も行った. 3.赤血球の変形運動を考慮した粒子法シミュレーション 粒子法シミュレーションを拡張し,赤血球の変形運動が微小血管レベルの血流に与える影響を検討した.その結果,赤血球が周囲の血しょう流れと力学的に相互作用をし,その結果として,赤血球の弾性特性および赤血球の全血中の数密度(ヘマトクリット)が見かけの血流抵抗を決定することを示した.これらの結果は,実験結果と定性的に一致した.さらに,この赤血球が血小板血栓に与える影響を検討するため,血小板と赤血球の力学的相互作用を直接的に表現する粒子法シミュレーション手法の開発も併せて行った.
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