研究概要 |
膜性骨化において間葉系細胞は凝集という過程を経て骨に分化することが知られており、骨由来細胞において3次元的な環境が分化を促進すると報告されている。しかし、従来より報告されている骨再生の組織工学的手法においては発生の過程を考慮したものはない。そこで、細胞の凝集を促準させる旋回培養を利用し、骨髄幹細胞の分化誘導、そして、組織再生に応用させるため、本研究では骨髄細胞から細胞凝集塊を大量に形成し、分化させることにより石灰化骨様組織を作製、また、形成された細胞凝集塊を注入法による骨再生に応用可能かどうか検討した。 ウシ骨髄間質細胞を採取し単層培養にて増殖させた後、1.0x10^7個の細胞を5mlの骨芽細胞分化培地に懸濁し、直径35mmの低接着性の培養皿を用い、70rpmの速度で水平状に旋回し浮遊培養を行なった。3,7,14日培養後に評価を行い、細胞凝集塊を組織学的に、また、RT-PCRによりmRNAの発現解析を行なった。さらに、旋回培養14日目の細胞凝集塊をコラーゲン溶液と混合し、ヌードマウス背部皮下にシリンジにて移植した。 旋回開始後,数時間で細胞は凝集し始め、直径300μmほどの細胞凝集塊が大量に形成された。また、培養7日目にはオステオカルシンmRNAの発現、オステオカルシンの免疫染色、および、アリザリンレッド染色で陽性像を認めた。培養14日目にはさらにその発現が増加した。旋回培養にて細胞の足場となる人工材料を用いず石灰化骨様組織を作製することができ、コラーゲン溶液との混合物は移植可能であった。本培養系において、骨髄幹細胞の分化誘導において有用であり、組織再生に応用できる可能性があることが示唆された。本法は、従来より報告されている骨再生の組織工学的手法とは異なる手法である。この方法を発展させることにより、骨髄穿刺により得られる骨髄間質細胞のみで骨欠損への移植が可能となることが期待される。
|