研究概要 |
骨の発生段階で起る細胞間相互作用を生体外で再現することによって,短時間で骨様の特徴を惹起する組織体(微小骨エレメント)を作製し,あらゆる骨欠損に適応可能な培養骨の開発を目指した.ヒト骨髄から採取した間葉系細胞(MSC)を培養により増殖させたのち,非接着性のwell中に高密度播種し,旋回培養することにより,大量の細胞凝集体を作製した.また,8週令のヌードラットの頭蓋冠骨に骨欠損(直径8mm)を作り,MSC凝集体や人工材料(β-TCP顆粒),それらを併用したものをサンプルとして移植した.移植後8週目でラットを屠殺し,μCTによる観察,組織切片の染色(H.E.染色),及び力学試験(3点曲げ試験)により評価した. 作製したMSC凝集体にCalcein・PI二重染色を施し観察した結果,細胞の壊死は殆ど見られず,細胞の生が確認できた.また,MSC凝集体をヌードラット骨欠損モデルに移植に使用したサンプルにおいて,H.E.染色により新生骨の形成が確認された.また力学試験の結果,強度は既存骨に劣るものの,十分な強度を持っていた.一方,MSC凝集体とβ-TCP顆粒を併用したサンプルでは,新生骨の形成は確認されたものの,β-TCP顆粒が残存していた.また,力学的強度はMSC凝集体のみを移植したサンプルに比べて低くなった.また,β-TCP顆粒のみを移植に用いたサンプルでは,新生骨の形成は確認されず,β-TCP顆粒は残存し,力学的強度はさらに低くなった.以上より,MSC凝集体のみを用いる骨再生法は組織学的,力学的観点において,β-TCP顆粒を用いる骨再生法よりも優れている可能性が見出された.
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