研究分担者 |
上田 貴洋 大阪大学, 総合学術博物館, 助教授 (70294155)
福永 伸哉 大阪大学, 大学院文学研究科, 教授 (50189958)
宮久保 圭祐 大阪大学, 大学院理学研究科, 助手 (70263340)
谷 篤史 大阪大学, 大学院理学研究科, 助手 (10335333)
肥塚 隆 大阪人間科学大学, 学長 (90027988)
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研究概要 |
阪大が所蔵するマチカネワニの骨格化石に対する研究は、すべて化石表面の形状に対して行われたもののみであり、骨の内部構造に対する研究は、ほとんど行われていないのが現状である。今回、高知大学海洋コア総合研究センターのX線CT装置を用いて全骨格の内部構造を測定した。約200点のすべての内部構造をX線CT装置を用いて測定する初めての試みであり、学術的価値も大変高い。今後、測定データを詳細に検討することにより、骨格内部の網目構造(毛細血管の後)から、変温動物であるマチカネワニの基礎代謝等が推測できる可能性があり、ひいては、マチカネワニ生存当時の気候等も推定できる可能性がある。また、分類学上重要な歯の並びに関しても、顎の骨の内部構造を調べることにより、より明確に定義することが可能であると思われる。 紙の劣化を評価するために、pHの異なる紙について、pHがスピン-スピン緩和時間(T_2)に及ぼす影響をNMRマウスにより検討した。コピー用紙を、pH=7の水とpH=5および3に調整した塩酸にそれぞれ浸した後、乾燥させた試料について^1H T_2を測定したところ、T_2の減少はアルカリ性が強いほど顕著であった。すなわち、強い酸性およびアルカリ性の紙では紙中の水の運動性が低下し、特にアルカリ性でその傾向は強くなることが明らかとなった。今後、統計的に紙の劣化を議論するに耐えうるより多くのデータの蓄積が必要である。 谷らは、日本海の海底コア試料を用い,堆積物に含まれる石英微粒子の粒径,結晶化度,酸素空格子量の3つを指標として解析した.粒径の粗い石英は中国北部から中国東北部,シベリアを起源とする風成塵,粒径の細かい石英は日本列島からの砕屑物であることを明らかにした.また,石英微粒子の粒径や酸素空格子量は氷期・間氷期サイクルと同調した変動を持つことから,東アジアにおける過去の風の影響を堆積物から読み取ることが出来ることを示した. 福永、寺前らは、去年度に引き続き、NMRおよびESR分光法の分析対象となる埴輪および古墳出土の土器の資料集成を行った。また、その過程で資料の出土位置と器種構成に着目し、古墳時代の葬送儀礼が海外の影響を受け変化したとされてきた横穴式石室への土器副葬に対して、在来的な文化要素が色濃く認められるということを指摘した。
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