研究課題
基盤研究(A)
活性酸素によるDNAの損傷は細胞の癌化や老化のそもそもの原因である事がこれまでの研究で明らかにされて、幾つかの塩基損傷については試験管の中で精製した蛋白や酵素を用いてどのように修復されるかが明らかにされて来た。しかし、その修復が実際のヒト細胞中でどのように進行するかについてはまだ何も分っていない。我々は2004年に顕微鏡のレンズを通して弱いUVAレーザー光を単一ヒト細胞核に照射し、前もって導入した修復蛋白の動きを解析する事により生きている細胞内での活性酸素損傷の修復プロセスを始めて解明した。この方法を用いてヒト細胞内の修復プロセスを解析するプロジェクトを考えた。レーザー光や紫外線を顕微鏡のレンズやフィルターの小孔を通してヒト細胞核の一部に照射し、その際に照射条件を変え、光増感剤を加えることにより種々のDNA損傷(細胞に活性酸素で生じるもっと頻度の高い損傷である単鎖切断と塩基損傷、それに最も細胞に影響の大きい損傷である二重鎖切断)を特異的に作成する技術を開発、改良し、損傷発生の原理を明らかにした(Mol Cell 2007)。これらの蛋白質可視化の技術に加えて、損傷の現場で形成される蛋白複合体を質量分析で同定する実験方法を確立し、さらにインフォマティックスやsiRNAを組み合わせて、細胞内で実際にゲノム安定性に機能する蛋白ネットワークを明らかにした。また、ゲノム安定性と、転写及び転写因子との関連にも注目して研究を展開している。これまでに、重要な新規の蛋白質とそめ複合体の同定を含む以下の発見をした。リン酸化ペプチドに結合するFHAドメインを持つ新規の蛋白PALFを発見した。この蛋白が塩基を無くした(AP)サイトを切るヒトでの2番目の酵素で、エキソヌクレアーゼの活性も持ち、DNA切断の場でポリADPリボシル化酵素PARP1を活性化する事を証明し、活性酸素によるゲノム損傷を修復する新しい機構を発見した。
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