研究概要 |
ヒト臓器・組織置換SCIDマウスを用い、核分裂放射能(中性子線、放射性ヨードなど)のヒト臓器・組織への急性、晩発障害を最新の迅速高感度測定技術を用い検出した。 1.ヒト組織置換マウスの作製・維持:IgG、IgM値が検出限度以下のC.B17-scid、C57BL/6J-scid、C3H/HeJ-md^+scidを大量生産し、倫理委員会の承認のもと、ヒト甲状腺、肺組織片等の長期継代維持を行った。 2.放射性ヨード(I-131)の影響:0.063-0.5MBq/マウスのI-131投与を週1回繰り返した。Gene Chipによるヒト臓器・組織における8500の機能遺伝子の発現異常の検出および、p53,K-ras, c-kit,β-cateninおよびRET遺伝子の変異を検出したところ、37週以上投与で18例中6個の突然変異が検出された。36回以下では24例中2例のみである。9個中7個はp53の突然変異であった。Gene Chipを用いた遺伝子発現の解析でも、機能遺伝子の抑制等がみられた。 3.核分裂放射能照射実験:近畿大学原子力研究所UTR-KINKI(炉心分の熱中性子も最大10^7n/cm^2・sec程度)を用い、ヒト甲状腺に続き、新たに肺組織を移植したSCIDマウスに中性子線1回0.2Gyの照射を7日毎に繰り返した。レファレンス照射(Gammacell 40 Exactor、およびコンピュータ制御^<137>Csシミュレーター)した場合、高線量率大量照射(33Gy以上)でp53,c-kitの変異が出現したが、低線量率では0であった。中性子線照射0.2Gyでは、ガンマ線大量照射と同じく、また、ヒト甲状腺置換と同じくヒト肺組織においても、遺伝子発現の異常がGene Chipより検出されている。現在、遺伝子変異について検索中である。また、微細構造障害も誘発されている。
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